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国際女性デー2008 今が見える国際女性デー展

私の出会った女性たち−国連人口基金親善大使の活動を通して 有森 裕子

親善大使としてカンボジア、タイ、インド、ケニア、タンザニア、パキスタン、エチオピアを訪ねた。親善大使として活動するうちに人口問題が女性問題に深くかかわっていることを痛感した。インドは親善大使として女性問題が大変なことになっていることを最初に気付かせてくれた国であった。

インドにはバーニング・ブライド(燃やされる花嫁)の問題があった。ダウリー(持参金)が少ないと、夫は花嫁を取り替えたるため、一番手っ取り早い方法、つまり殺してしまう。7割がたのやけどを負うのでほとんどの花嫁は燃やされて死んでしまうが、まれに生き残る場合もあり、その時は一生一人で過ごさなければならない。

女の子は教育を受ける期間が短いが中にはもっと勉強したいという子もおり、そのため女の子ばかりが集まる集会が開かれていた。学びたいという彼女たちの目が印象的で学べばいろいろなことができるのだろうなと思った。

タンザニアとケニアの国境近くではエイズ孤児の学校を訪ねた。援助で成り立っている学校で、制服はアメリカ人の旅行者から寄付されていた。ここでは自分の夢なども語ったが、親善大使よりオリンピアンあるいはマラソンランナーといったほうが子どもたちの目が輝いた。

ケニアでは3万人規模のスラム街のユースセンターを訪ねた。スラムで長く暮らす若者にはパワーを生かす場所がない。そのため若者の力を生かす場として、縫製などのプログラムを実施しているユースセンターが設立された。若者たちはセンターの教育を受け自立しようとスラム街でがんばっている。

エチオピアではフィスチュラ(外傷性産科ろう孔)の病院を訪問した。同国では約8割の女性がFGM(女性性器切除)を受けている。その上、早婚で12〜13歳で結婚、そのあとすぐ出産するので骨盤が十分に発達していない。そういう状況で出産すると周りの細胞が死んで穴が開き、排泄物が垂れ流しになる。この状態がフィスチュラとよばれ、穴がふさがってドライになるまで本人の大変な努力が必要になる。子どもは死産の場合が多く、この病気のため夫も去ってしまう。女性は実家に帰るが悪臭がするので庭の隅で一生を送ることになる。精神的なダメージで自殺する女性もいる。この病気は300ドルくらいの手術で治る。

早婚について言えば、女の子は8歳ぐらいから2〜3キロ歩いて一日3〜4回の水汲みをしたり、遠い学校に通ったりする。その途中でレイプされることが多く、親は早く結婚させて家に入れたがる。しかし彼女たちの中にはもっと勉強を続けたい子も多く、将来医者になりたい、教師になりたいなどの夢を語ってくれた。

パキスタンでは昨年家族計画協会を訪問した。ここは地元の銀行と協力してマイクロクレジット(小額融資制度)を実施している。これを通して女性たちは社会の中のみならず家庭でも力をつけてきている。政府の運営するシェルターで黒い布で顔を全部覆った女性に会ったが、彼女は寝ている間に働かない夫によって硫酸をかけられたのである。このような暴力は州によっては20件、殺人も250件を越し、ドメスティックバイオレンスが大きな問題となっている。

加藤シヅエセンターも訪問した。ここは家族計画運動を行っており、縫製技術などを身につけさせる活動に従事し、女性の自立を助けていた。パキスタンでは女性が一人で外出できないのでこのようなセンターは女性が一人でも来られる場所としても役に立っていた。

現場で女性に関する問題を沢山見てきたが、どれをとっても悪意から出たものであるとは感じられなかった。背景には長い歴史、慣習などがあり、外からの介入で簡単に止めさせられるようなものではなかった。解決には本人たちがいかに納得して取り組んでいくかが大切で、それには長い時間、根気、お金が必要である。自分は専門家ではないがこのような状況を広く周知していくのにスポーツが役に立つと考えており、これからも自分にできる活動を続けていきたい。

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