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国際女性デー2010

DV根絶のための「講談とシンポジウム」

NPO法人ユニフェム日本国内委員会
「エイボン・女性のエンパワメント・ブレスレット基金」助成金事業

日時:
2010年3月6日(土)13:30〜16:30
会場:
男女共同参画センター横浜(フォーラム)
第一部  講談「DV根絶のために〜女と男すてきな関係」
                講談師  宝井 琴桜
第二部  シンポジウム「DV根絶のためにできること」
主催:
ユニフェム(国連女性開発基金)よこはま ちらし
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共催:
男女共同参画センター横浜

女性の3人に1人が、配偶者やパートナーからの暴力を受けたことがあると報告されています。ユニフェムよこはまは、今年の国際女性デー「ユニフェム日本国内委員会助成金事業(エイボン・女性のエンパワメント・ブレスレット基金)」を受け、3月6日、男女共同参画センター横浜にて「DV根絶のための講談とシンポジウム」を開催しました。啓蟄というのに冷たい雨が降る中を、会場では女性デーのシンボル、ミモザの花が参加者を迎えました。後援団体のパネルの展示やグッズの販売も催しを盛り上げました。ユニフェムよこはま西村洋子会長、横浜市男女共同参画推進協会藤井紀代子理事長による挨拶で会は始まりました。

第一部
講談 「DV根絶のために〜女と男すてきな関係」 講談師 宝井 琴桜


張り扇をたたいて熱く語る琴桜さん

講談でDVを
DVは小学生レベルでも知られる語となりつつあり、深刻化しています。
女流講談師の宝井琴桜さんは、500年もの歴史があるという、一つのテーマを噛み砕いて分かりやすく話す大衆芸能「講談」という手法を使い、重く、ともすれば、聞き手が「スーッと引いてしまいそうな(琴桜さん)」DVの問題をいろいろな側面から私たち聴衆に興味深くそして分かりやすく語ってくださいました。

女性を取り巻く運動と法律
「男に出来て女に出来ないことはない」「やらせてもらえないから出来ない」−坂本龍馬の姉の乙女の言葉の引用は私たち聴衆にとってハッとするものがあります。「女であることが因果」―母の苦悩の言葉を忘れなかった市川房枝が、女性の政治的社会的自由の確立を目指し婦人参政権運動を主導したこと、「新婦人協会」の設立など女性の地位向上に貢献した平塚雷鳥そして奥むめお達と展開したことなど、女性を取り巻く運動の紹介がありました。「男女共同参画社会基本法(1999.6月制定)」の5つの柱の一つ「男女の人権の尊重」がDV防止(DV防止法の制定は2001年)には不可欠だということです。しかし上記のような法律や女性の人権に関わる諸々の社会的活動の詳細を噛み砕くのは難しいです。女であることの窮屈さをいろいろな場面で多くの女性が体験してきていることでしょう。次のようなエピソードは聴衆の多くの方々を納得されてくれます。ここに紹介します。

DVに関するエピソード
架空の家族「山下家」が登場します。主人公は82歳のハナさんです。友達のヨシさんを誘って老人会主催の「男女共同参画社会基本法」に関する講演会に出かけるところです。「そうだ、タケちゃん(二人の共通の友人)も誘おうよ」ということになります。誘いを受けたタケさんの顔は暗く、返事は曖昧です。
退院してきた御亭主のヒョウロクさんの暴言が奥から聞こえてきます。タケさんはこの御亭主と連れ添って以来60年間、バカ呼ばわり同然で過ごしてきて、今度は介護を必要として寝ているヒョウロク氏に今なお隷属し、「もう少しの我慢」と自分に言い聞かせながら生活しているのです。「殴らなければいい人なんだけど」のタケさんに「いい人って殴らないんじゃないの」と問いかける2人。これはあらゆるDVの基本的な根幹をなす名言です。又2人は講演会の帰り、バスに乗り遅れたことに腹を立て、妻を怒鳴り、足蹴にする夫を見かけ、思わず聞いてきたばかりの基本法「男女の人権の尊重」を訴えます。

DVという重いテーマを、琴桜さんは悲しい話ながらも時には笑いを交えて、興味深く語ってくださいました。張り扇を太鼓のばちの如くに机に叩きつけて、テンポ速く語るその術に、聴衆の各自が引き込まれたと思います。人権の尊重というテーマに問題を投げかけた先駆的女性に感謝をしつつ、ハナさん物語を身近な例とし、わが身を人間として尊い存在なのだと再認識させられました。「女性に対する暴力の根絶」は「女性」「貧困」という二重差別に苦しむ途上国女性を支援するユニフェムの4つの基本理念の一つであります。しかしながら、「女性に対する暴力」は、もはや途上国だけの問題ではありません。壇上を飾るミモザ、桜の大きな花束を心の土産として、新たなる自分を発見して帰路につかれた方々も大勢いらしたことでしょう。宝井琴桜さんに深く感謝いたします。

第二部
シンポジウム 「DV根絶のためにできること」

宝井琴桜講談師の軽妙な語り口による身近な話題によって、DVという深刻な問題について参加者の理解が深まったところで、第二部は納米恵美子さんの絶妙なコーディネイトによりシンポジウムが行われました。

■パネリスト
東 玲子 弁護士、NPO法人子どもセンターてんぽ 理事
瀧田信之 NPO法人湘南DVサポートセンター 理事長
阿部真紀 NPO法人エンパワメントかながわ 事務局長
■コーディネーター
納米恵美子 男女共同参画センター横浜 館長

DVと子ども

まず東玲子さんから神奈川県配布の冊子「ドメスティック・バイオレンスをなくすために」を使って、弁護士活動の具体的事例を交えながら分かりやすい説明がありました。その中で「1回しか暴力をふるっていないという言葉を聞きますが、ライオンに攻撃されたことが1回しかないからといって恐怖が生まれないといえるでしょうか。1回の経験で大きな恐怖が生まれ、その後ずっと恐怖に心を支配されることになるのです」との発言に、多くの参加者がうなずいていました。また「児童虐待防止法では、子どもにDVを見せることも虐待につながると規定。DV被害者が子どものために我慢するというのはおかしいと理解してほしい」と語りました。

ケアプログラムでは

瀧田信之さんの取り組む11週の「暴力を目撃して育った子どもの心のケアプログラム」の紹介がありました。DV家庭で育ったのは自分だけと、孤立的な子どもに対してのスクリーニングによるグループ活動での支援。これは世の中には同じ境遇の人もいるという安心感から、恐怖と対峙できるようになるそうです。2人のファシリテーターによるサポート体制をとって一番怖かった暴力を絵に描いて発表しようという活動を行います。グループに集団の力学が及び、それがきっかけとなり、大きな輪ができ解決の方向へ進むことができるそうです。瀧田信之さんは「何よりも子どもの自尊感情、自分を大切に思う気持ちをもたせる」ことを強調されていました。

デートDV

阿部真紀さんも「すべての子どもと大人の人権意識を高め尊厳をもって生きることのできる社会の実現には、一人ひとりの自尊感情を育て、エンパワメントすること」と発言されました。また最近10代後半の子どもたちに起きているデートDVについての報告ありました。デートDV啓発プログラムを受けた女子高校生の実際の事例です。友人がどう見てもつきあっている相手に支配されていると感じた彼女は、友人から本当のことを聞き出しました。そして、友人の相手の所に行き友人に代わって抗議しました。当初2,3人で抗議しました。しかし、怖い思いをして戻ってきてしまいました。その後、数十人で相手を問い詰めて、友人本人も嫌だったと意思表示をし、ついに別れさせたということです。数でDVを制したという女子高校生たち。これはデートDVという若年層の被害・加害に憂えているだけでなく、高校生から学ぶことができた事例です。
今後の活動に明るい見通しをもつことができました。

今後の課題は

実際のDV被害は刑法犯で処理されます。DV防止法について警察の運用をもっと厳しくという声もあります。法律では配偶者・かつての配偶者の家庭内暴力を対象としています。恋愛関係にある場合は入っていません。ですので、デートDVについては予防啓発活動が必須です。シェルターの充実とその後の支援体制も必要です。NPOと行政の連携を深めるとともに、NPOへの資金援助が必要です。このように課題は、まだまだたくさんあります。
最後に、活動に携わる人は笑顔がスパイス、活動は男女別なく、被害者が自分の置かれている状況に気づくよう繰り返し支援することが大事、心配しているというシグナルを出し続けることが解決につながるという話があり、会は終了しました。

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